はじめに

 獅子舞は、全国的に分布し、古来より民族芸能として伝えられている。各地にはさまざまな様態の獅子舞があり、郷土芸能として人々に親しまれ根付いている。
 私の住む石川県にも、他県にはあまり見られない様態を示す獅子舞がある。また隣の県、富山県は獅子舞が非常に盛んに行われており、いろいろな様態の獅子舞がみることができる(私もこの富山県の獅子舞の魅力に引き込まれ、獅子舞にはまってしまった。)。
  私の田舎でも獅子舞があり、私も舞った。今は、少子化のため行っていない。今回、獅子舞について調べるにつれ、私の地区の獅子舞は石川県の能登島の向田から習ったものだと知ったときは、ちょっとした歴史を感じ、ちょっとした感動を覚えると共に情けない感じもした(実際に舞っているのに今の今まで知らなかったとは・・・・てな感じ)。メイン演目は獅子殺しなのだが、この舞は小学校高学年の男子にしか舞うのを許されておらず、獅子殺しに憧れ、早く大きくなりたかったことを思い出す。現在は舞われていないので、寂しいかぎりである(田舎に戻っていない私が言うのもあつかましいが・・・・。)
 ここでは、現段階で私自身が書籍やインターネットで調査したもの、また、現地での実際に見たものを統合して出した、考え方を示す。しかし、まだまだ調査不足なのであくまで暫定的なものとする。



北陸の獅子舞の分類


図1.獅子舞の分類


【氷見獅子純型※】
 富山県の氷見地方全域に見られ、石川県の口能登周辺にまで広がる。
・ 囃子のテンポは速く、勇壮活発。
・胴幕の中には頭・尾を含め、だいたい五・六人ほど入る。
・ 胴幕は、手を上げて張る。
・獅子に対する舞手は天狗で、面をつけ、烏帽子をかぶる。
・ 採り物は、色紙の幣をつけた1メートルぐらいの竹の棒を持つ。また、ヨソブリ(地域によって呼び名は異なる。)等には、フサと呼ばれるものを持つ。
・ 楽器は、笛・太鼓・鉦を用い、太鼓台が立派であるのも特徴的。
 純型の中でも、天狗の扮装や採り物など演目により、三つぐらいに分けることが出来ると思う。石川県側山間部に多く見られるのは「山間部系」(十二町が源流らしい)としてみる。他は、「十二町系」、「二上・守山系」分類できる。※「十二町系」は、烏帽子姿の天狗のほかに、シャグマ(毛冠)姿の天狗があらわれる。
  さらに、採り物もナギガタなど長物の武具が使用される。「二上系」は、高岡市二上からのもの。採り物にナギガタや六尺棒など長物の武具が使用され、それらをもって舞うのはシャグマ姿の天狗である。長物を使用した演目が顕著に見られる(総合的に見ると氷見獅子そのものだが、部分を見ると砺波獅子に近いところがある)。

【氷見獅子伝播型※】
 富山県の五箇山や南砺地方、魚津や上市周辺、石川県の口能登や中能登周辺に伝わった氷見獅子。演目内容は氷見獅子の特徴を持つ。しかし、獅子や天狗の外見は、近隣の異なる様態の獅子の影響を受け変化している。
  五箇山や南砺地方は砺波・加賀獅子の影響を受けるものを「呉西型」、魚津や上市周辺は金蔵獅子・下新川獅子の影響を受けているものを「呉東型」とした。「能登型」は、ゆっくりなテンポ。舞手が子供が主となるからかな・・・。獅子殺しがないところが多いみたい。獅子殺しは難しいし・・・。

【砺波獅子※】
 富山県の砺波から射水地方の南部あたりに見ることができる。婦中町辺りへも及んでいる。
・胴幕の中には、だいたい五・六人ほど入る。
・ 胴幕は、竹の輪で張る。
・ 獅子に対する舞手はシシトリ等と呼ばれ、少年が二〜四人対する。
・ 採り物は、棒・ナギナタ・太刀・鎖鎌などの武具を用いる。また、氷見獅子や金蔵獅子の影響を受け、それらに使用される採りものを使用するところもある。
・演目は、加賀獅子、氷見獅子、金蔵獅子の影響を受けている。

【射水獅子※】
 富山県の旧新湊市周辺に見ることができる。旧新湊市の海岸付近の獅子舞は通称「浜獅子」と呼ばれており、中でも荒々しいことで有名。氷見獅子、金蔵獅子、砺波獅子の影響を受けているが、どの分類にも属さない独自のものを形づくっている。
・胴幕には、五・六人ほど入る。
・胴幕は、手を上げて張る。
・獅子に対する舞手は、キリコと呼ばれる花笠をかぶった少年が、だいたい二人一組で対する。複数人の場合もある。また、シャグマをかぶった天狗も演じる。
・採り物は、天狗は砺波獅子、キリコは金蔵獅子の採りものに似ている。
・演目も、氷見獅子、砺波獅子の影響があるが、独自の演目として確立している。

【金蔵獅子※】
  富山県旧細入村や旧大沢野町あたりにに見ることができ、富山市南部、旧大山町、立山町にも広がっている。五箇山や、砺波地方にも伝承されているところがある。
・獅子は、二人立ち。雄雌二頭が組みになる「二頭型」、一頭だけになる「一頭型」がある。※
・ 頭は小さめ。獅子に対する舞手は、野袴をつけた武者姿の金蔵。また、ササラと呼ばれるものやオドリコと呼ばれるものもある。
・ 採り物は、槍・傘・扇・刀・幣などさまざまである。
・演目には、曲獅子等の曲芸的なものがあるのも特徴的である。

【下新川獅子※】
  富山県下新川地域一帯にに見ることができる。二人立獅子ではあるが、様態は金蔵獅子と大きく異なる。
・獅子頭は頭にかぶるようにする。
・獅子に対する舞手は天狗で、天狗の数が多いことが特徴的である。多いところでは十六人という地域もある。
・ 採り物は、棒・刀・傘・酒樽などである。
・演目においては、大勢の天狗が蛇ノ目傘を用いて、いっせいに演ずるのは見物である。天狗が主役的存在。

【伊勢神楽獅子】

 福井県の 全域にてほぼ見られる、現在よく見られる伊勢大神楽の獅子舞。ここでは「伊勢神楽獅子」とする。江戸時代より現在に至るまで、伊勢大神楽の巡業が福井県にきていることから、福井県各地に深く根付いたのだろう。

【伊勢神楽獅子(伝播型)】

 富山県の新川地区の北部や石川県の奥能登地方・加賀地方の一部に見られる。伊勢神楽獅子の一部が残った又は伝わった感じのものをここでは「伝播型」とした。
・悪魔祓いを主とする。獅子に対する舞手がいるところは、基本的には天狗(?)一人。
・富山県では獅子頭を頭にかぶり、口で固定し、手には、幣や刀を持つ(獅子方が一人のところもある。)獅子舞がみられる。
・石川県小松の一部地域には江戸時代後期頃、伊勢で製作された獅子頭が残っている。また、同期頃実際に、伊勢に獅子舞を習得に行っていたと伝えられている。

【能登島獅子】
 石川県の能登島周辺から奥能登へと広がっている。
・胴幕の中には、4人前後入る。
・ 胴幕は、竹の輪で張る。
・獅子あやしは、オドリコと呼ばれ少年が行う。採り物は、 両端に色紙の幣をつけた竹の棒(長さの違うものが数種類ある。)、マサカリ、太刀、扇などである。
・演舞は、氷見獅子を基盤として独自に変化させたものである(加賀獅子の影響があると思われる。)。
・獅子が出ないニワカ踊りが行われる。
  この様態の獅子舞は、能登島が発祥とされているので、ここでは「能登島獅子」とする。

【中能登獅子(仮称)】
 石川県の能登地方の中部に多く見られる獅子舞(大樹部門の中能登地区の分類とは別の意味。特に良い名称が思いつかなかった・・・)。
とりあえず「中能登獅子」にした。まだデータ不足なので詳しくはまた今度・・・・

【富来獅子(仮称)】
  どの分類にも当てはまらない。まだ、富来の大福寺でしか見ていないので、とりあえず「富来獅子」として分類をした。大福寺の獅子の伝承元は田鶴浜とか・・
まだデータ不足なので詳しくはまた今度・・・・

【金沢獅子】
 石川県金沢市を中心として津幡町周辺などの北加賀地区やお隣富山県の旧福光町ににみられる。一方、南加賀地区では様態が異なってくる。加賀獅子と呼ばれているが紛らわしいので、ここでは「金沢獅子」と呼ぶことにする。
・獅子は巨大で、胴は舞わず、獅子頭のみが舞う(胴を出さず、頭のみで演舞するところもある)。
・ 獅子に対する舞手は、「棒振り」と称されるシャグマをかぶり、袴姿の青年又は少年が演じる。
・ 採り物は、棒・ナギナタ・太刀・鎖鎌などの武具を用いる。
・演目は、基本的に獅子獅子を討ち取る形で演舞され「喧嘩獅子」とも言われている。一人で獅子に挑む舞から複数人で挑む舞がある。

【行道獅子※】

 現在見ることができるのは、北陸では富山県の限られた地域となっている。室町時代から江戸時代初頭にかけての製作になる「箱獅子(一見竜にも見えるので竜頭ともよばれる)」と呼ばれるものが使用される。
・御旅の行列の先導をし、宮の周りを廻る。
・お祓いのため、子供や氏子の頭をかんでまわる。
・ 大きな寺社の行事といった感じ。
・石川県では、奥能登地方に「箱獅子」に近い形の獅子頭がいくつか残されている。

【越前獅子(仮称)
 石川県の福井よりの南加賀地区から福井県嶺北かけて見ることができる獅子舞。分布を明確に把握していないので、とりあえずここでは「越前獅子」とする。
・獅子は小型で胴も一緒に舞う。 
・演舞は、加賀獅子に様態も残しているとこがあるが、伊勢神楽獅子の様態も強く示している。

【三匹獅子】
 福井県にて唯一見ることができる、風流系の「鹿踊り」(鹿のかわりに猪を使った呼び名など呼び名はいくつかある。)一般的に「三匹獅子」とよばれるもの。
・鹿頭をかぶり、太鼓をもち自ら叩く、一人立ちのものである。
・埼玉県川越市から福井県小浜市の雲浜に伝えられたもの。

注1:※は「富山県の獅子舞」 富山県教育委員会1979より

 

北陸の獅子舞-百足獅子-について

 日本の獅子舞の源流は大陸にあるとされている。大陸の獅子舞は、二人立ち系のものが多い。そうすると、百足獅子と呼ばれる獅子舞は、どのようにして発祥したのだろうか?・・・・。明確な答えは最終的にでないだろうが、北陸の獅子舞から辿っていけるところまでたどっていく事にする。

  石川県では、ほぼ全域に百足獅子と呼ばれている形態の獅子が舞われている(ただ、金沢獅子のように胴が舞わずないものは百足獅子と言って良いか多少疑問は残るが・・・・。)。富山では、呉西に百足獅子、呉東は二人立獅子が舞われている。福井県では、神楽獅子、風流系の三匹獅子(雲浜獅子)が有名である。
  全国的に見た場合、二人立ちの中国獅子や神楽獅子、風流系の一人立ち獅子が目だって見られた(インターネットや書籍)。百足獅子と呼ばれるものは、北陸発祥?と思いきや、結構他の県でも舞われていた。それも、北陸の獅子舞より年代は古い(分かっている範囲で・・・。)。山形県、長野県、静岡県、滋賀県にも百足獅子は存在した(他にもあるかもしれないが現在知る限りではこんだけ。)。
  長野県の大島山瑠璃寺の獅子は、金沢の獅子とかなり同じ様態を示している。大島山瑠璃寺の獅子は、胴が舞わず、胴の中に囃子が入る(屋台獅子と呼ばれている。)。金沢獅子も同様、胴が舞わず、胴の中に囃子が入る(一部地域では囃子が胴の中に入らないところもある。)。ただし、獅子に対する演舞者の扮装や演目はまったく異なる。大島山瑠璃寺の獅子の獅子舞は、1112年に滋賀県坂本より伝承されたと言う。金沢獅子では、現存する獅子頭で古いものでも大体1650年ごろとらしい。
  ところ変わって、山形県長井市の黒獅子は、神輿の先導役としてツユハライ(先祓い)し、家々をまわっていく。胴の中には20人程度が入る。先にあげた富山県でみられる行道獅子と似ているとこがある(胴に入る人数、村周りと言う点は異なるが・・・・。)獅子頭も、鼻が大きく、目も大きく丸いと言う点で酷似している。長井市の黒獅子の歴史をさかのぼると、1050年ぐらいになると言う。行道獅子で使われる獅子頭は、分かっているものの最古のもので、富山県では1481年らしい。伊勢神楽系の獅子ではあるが、石川県で現在残っている最古のものは、1372年らしい。
 
つづく・・・

 

わが故郷の獅子舞

  今回、石川の獅子舞を知る上で、石川県教育委員会から出ている「石川県の獅子舞-獅子舞緊急調査報告書-(1986.3.)」にお世話になった(挿絵の写真に小さいころの姉貴が写っていたので、かなり驚いた。)。しかーし、私の地区の獅子舞の調査がちょっとアマイ!まぁ他にも調査しなければいけない所が多々あるのだから大変だろうけど・・・。よって、ここで訂正を・・・・。ちなみに私の田舎は石川県の穴水町甲(黒崎)。調査が甘いという理由は、獅子殺しがないと記載されていた点である。
 黒崎の獅子舞は、獅子あやしは小学生、囃子方は中学生、高校生で構成される。獅子方は、青年団が行う。獅子頭は小型で、頭持ちを合わせ胴幕の中には3人入る。胴幕の中には竹の輪がひとつ入る。囃子は、太鼓と笛のみである。獅子あやしの服装は、模様入りの着物にモンペ、欅掛、手甲、白足袋、草鞋である。獅子舞の演目は、「三人衆」、「大太刀」、「マサカリ」、「二本棒」、「一本棒」、「獅子殺し」、「ニワカ踊り(両太刀)」である。三人衆は、基本的に女の子で構成される。大太刀、ニワカ踊り、一本棒は男の子が優先される。獅子殺しは、必ず小学校高学年の男の子が舞うことになっている。
  甲は、大甲、小甲、黒崎、阿曽良、宮古の五地区に分けられる。それぞれの地区には地域神が祀られている(黒崎の場合は白山神社が地域神)。この五地区の総産土神として、大甲にある加夫刀比古神社が存在する。加夫刀比古神社の秋祭りは引き舟祭りともよばれ、大甲の浜から黒崎の浜まで二基の神輿が船にのりやってくる。神輿は村周りをしつつ、大甲の神社へと戻る。獅子舞は、神輿が黒崎についてからツユハライ役として、村周りを行う。加夫刀比古神社につくと、獅子舞を奉納するが、このときは獅子殺しは行わない。一通り神事が終わったあと、黒崎に戻り、白山神社の前の広場にて「獅子殺し」が行われ祭りが終わる。
 

未訪問の獅子舞の日程-地元の方及び役所へ問い合わせた地区の獅子舞-

名称
獅子型
神社・寺
日程
住所
城村の獅子舞
金蔵獅子
八川神社
4年に一度(前回-2004年4月初旬) 富山県富山市城村
稲代の獅子舞
金蔵獅子
稲代住吉神社
2年に一度(前回-2005年4月2日) 富山県富山市(旧大沢野町)稲代
東種の獅子舞
氷見獅子
白山神社
04/18 富山県中新川郡上市町東種
気多神社の春祭り
行道獅子
気多神社
04/18 朝8時ごろより 富山県高岡市伏木一宮
ボンボコ舞
-
西宮神社
約5年に一度(前回2001年) 4月19・20日の例大祭
2007年実施可能性大。
富山県射水市(旧新湊市)本町
岡田の獅子舞
金蔵獅子
刀尾神社
不定期 富山県富山市(旧大山町)岡田
沓掛の獅子舞
新川獅子
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9月第4土日 富山県黒部市沓掛
椚山の獅子舞
新川獅子
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10月第1週土日(変更あり) 富山県下新川郡入善町椚山
青木の獅子舞
新川獅子
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10月体育の日の次の土日・・たぶん 終日15時位まで 富山県下新川郡入善町青木
木根の獅子舞
新川獅子
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10月体育の日の次の土日・・たぶん 富山県下新川郡入善町木根
下立の獅子舞
新川獅子
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10月21日付近 富山県黒部市(旧宇奈月町)下立
上野の獅子舞
金蔵獅子
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前回2005/10/16 富山県富山市(旧大山町)上野